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Traffi-Cationトップページ > Traffi-Cation 2020 春号(No.53)

【特集】新たなクルマ社会における給油所の将来

地域の人と物流への貢献

給油所を宅配荷物配送拠点とする試み

 宅配ボックスに関して、現在の規制に抵触しない形で、給油所として全国初の設置を行った神奈川県にある相原興業株式会社の「セルフリーダー上大井SS」を訪ねました。

 上大井SSは、2013年12月にオープンし、敷地は約2,600㎡(800坪)という大規模スタンドです。

 セルフサービスの給油所であり、ドライブスルー洗車設備を備えています。
 昨年12月の来店数は、1ヵ月にガソリン車1万4,000台、ディーゼル車(トラック)5,000台と、合わせて1万9,000台。1日当たり633台の来店がある給油所です。

 この上大井SSに宅配ボックスが設置されたのは2017年9月のことでした。
 きっかけは、大手宅配会社からの提案だったそうです。

 相原興業社長の相原孝光さんは、この提案に対して次のように考えたとおっしゃいます。

「もちろん新規のお客様を呼び込めるとか、利用者の拡大につながるため良い提案だと思いました。それ以上に地域の方々のお役に立つのなら、という気持ちでした」

 利用者はリピーターの方が多く、男女比率は半々。
 利用時間帯は夜から深夜帯にかけて。仕事帰りなどに利用している人が多いようです。
 このボックスは、複数の宅配事業者が共同で使用しています(写真②)。

写真② 宅配ボックスは事務所棟の横に設置されている。

 

なぜ上大井SSでは宅配ボックスを設置することできたのか

 本来「給油とその付帯業務以外はできない」という規制がある給油所で、上大井SSが宅配ボックスを設置できた理由は「広い敷地を持っていること」でした。

 敷地内横断歩道の左側に構内道路を設置することができたため、宅配ボックスを給油所の敷地外とし、現状の規制に抵触することがないようにしたのです(写真③)。

写真③ この構内道路を設けることによって、宅配ボックスと洗車設備は給油業務の範囲外とみなすことが出来た。

 全石連が求めているように宅配ボックスに関する規制が緩和され、屋根をつけても構わないということになれば設置しやすくなり、新たなビジネス展開のひとつになり得ます。

複合的機能を持つ給油所へ

 給油所が現在の利用者の利便性を確保しながら、次世代モビリティの普及等も睨んだ社会インフラとして持続するためにも、新たなビジネスの構築が不可欠です。
 2020年4月の規制緩和は、ビジネス拡大、給油所の機能強化の第一歩につながることが期待できます。さらにそれを加速させるためにも、残存する規制に対しては、より科学的な根拠をもって再検討の上、緩和されることが求められます。

 給油所が複合的機能を持つことによって、その経営が安定し、社会インフラとしてとしての役割を果たしていくことができます。

 ユーザー・住民視点からも、給油所が複合的な役割を持ち、あそこへ行けばワンストップで何でもできるということになれば、利便性も増します。
 公共サービスも含め、エネルギー供給拠点として、またコミュニティ拠点、商業施設、物流といったサービスを集積させることで、本当の意味の総合サービスステーションとなり得ます。

調べよう・議論しよう

 通常時には気づかない災害時の給油所の役割を踏まえた上で、以下の視点から生徒の皆さんに議論を促してみてはいかがでしょうか。
・あなたの街の給油所では、給油以外のどんな仕事をしているか、どんなことをしたいと思っているか、調べてみよう。
・あなたの街の住民にとって、望ましい給油所の事業・スペースの活用法は何だろう。

 

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